一夜だけの恋人

ウォーカーとキスをかわしているなんて! トリナは天にものぼる心地だった。
仕事仲間だったウォーカーに、トリナはずっと憧れていた。
挙式直前に花嫁に逃げられてしまった彼を慰めるうちに二人の間には親密なムードが漂い始めたのだ。
ウォーカーが求めているのは、ほんのいっときの慰めだとわかっている。
でも今夜だけでいい。
彼と一緒に過ごせるなら。
夢のような夜を胸に、トリナは翌朝ウォーカーのもとを去った。
一年後、思わぬかたちで再会することなど想像もせずに。
フィービーの住むコンドミニアムに、噂の男が越してきた。
かねてより、容姿抜群で財力もあると評判の、“完璧な独身貴族”ワイアット・マディソンだ。
一目で、フィービーは恋の虜になった。
思いきって彼を友人の婚約祝いパーティに誘うが、仕事が忙しいからと、あえなく断られてしまう。
しかたなく彼女は独りで出席することにした。
今夜は彼を忘れて宴を楽しもうと会場を見まわすと、親友が男性と親密で楽しげに話していた。
うらやましく思ったのもつかの間、フィービーは色を失う。
親友の隣にいたのは、ここにいないはずのワイアットだった……。
インテリアデザイナーのキティは半年前に故郷に帰ってきた。
昔からこの地にはいい思い出がない。
高校時代、赤い縮れ髪をした地味な美術部員だった彼女は、初恋の人ジャックに全校生徒の前でふられて笑い物になった。
今もまた、仕事がうまくいかず貧窮している。
だがある日、めずらしく大きな仕事が舞い込み、キティは雇い主である映画館オーナーのもとを訪れた。
どんなボスの下で働くのかと期待に胸をふくらませて館内に入り、彼女は凍りついた―― そこには、この世で最も憎い男、ジャック・テイラーが待っていたのだ。
十代のブランディにとって、父の右腕として働くクリントは、危険な魅力にあふれた大人の男だった。
彼が結婚し、幼い恋が破れたあとも、いまだに忘れられない。
そのクリントが妻を亡くして打ちひしがれているという。
「彼に笑いを取り戻させてくれ。
おまえにならできる」大好きな父に頼みこまれたブランディは、湖畔のキャビンで隠遁生活を送るクリントのもとを訪れた。
七年ぶりに会う彼は陰りを漂わせ、いっそう魅力を増していた。
彼に惹かれてはだめ。
ブランディは必死に言い聞かせた。
もう一度彼に拒絶されたら、この心は張り裂けてしまう!バーで一人、カクテルを飲む女性―― その寂しげな後ろ姿にリーアム・コンウェイは目をとめた。
ふと振り向いた彼女の澄んだグレーの瞳に心を奪われ、リーアムは彼女の隣に座って同じカクテルを注文した。
隣に座った見知らぬ男性に声をかけられたアリスは彼に見つめられて体が熱くなるのを感じた。
たまにはバーでハンサムな男性とおしゃべりしてもいいんじゃない? まして今日は私の三十歳の誕生日だもの。
その夜アリスは、自分でも信じがたいことに、彼と二人タクシーに乗って、家路に就いていた。
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